綺麗な顔で寝るんもんだ。
 
 隣で小さく息をしながら心地良さそうに眠っている相方に対して、そう素直に思った。窓からは明るい光が差し、きっともう太陽は空高く昇っているが、昨日遅くに帰ってきたローランサンだったから、きっともう少し眠っているだろう。そして起きると、いつもローランサンを待って起きていようと思い、暇つぶし用の本を片手にいつのまにかテーブルに突っ伏して寝てしまう僕に、風邪を引いたらどうするんだと説教をするのだろう。こういう朝は夢の中で不安になって飛び起きる僕の気持ちを彼は知らないのだ。
 いつのまに隣に誰かが居ないと眠れなくなったのだろうか。触れて温もりを感じなければ、他人の生すら確かめられないのだから人間とは不便な生き物である。しかしそれも風情があると思えるのは天気がいいからだろうか。太陽の光でキラキラとした部屋の中で、ローランサンが隣で眠っている事実に僕は一人少し浮かれた気持ちになる。
 
 
 ローランサンの剣を持つ男らしい手に触れ、起きないこと良いことにそのまま指を絡めた。起きていたら眉を潜めて、何だ、と短く理由を責められるのだが、言葉に出来るほどの明白な答えなど持ち合わせていないので、そのまま渋々と手を離すはめになる。
 僕が普段から男に言い寄られ、気を悪くしているのに気を使っているのかどうなのか知らないが、ローランサンは僕に触れることをよく躊躇うのだ。それが彼の意に反することだというのは表情から簡単に読み取れてしまうので、僕はいつも焦らされる。もっと激しく求めてくれて構わないのに。なんでいつも僕ばっかり・・・。
 
 普段は眠りの浅いローランサンだが、疲れているのか今日は随分と深く夢に入っていた。顔を覗き込み、くすんだ銀色の長く伸びた前髪を片手でそっと払えば、やっぱり男らしい整った顔立ちだ。娼婦が寄ってくるのも納得がいく。
 
 
 自然と、無感情に閉じられた唇に目が行き不思議な気持ちになる。ローランサンの指に絡ませていた方の手に自然に力が入り、無意識に寝息が掛かるくらい顔を近づけた。
 
 
 
 
「・・・イヴェー、ル?」
 
 
 
 鼻先が触れ合うか触れ合わないかというところで、ローランサンが重たそうに目を開いた。ばちりと目が合う。藍色の瞳の中に自分の顔があまりに大きく写ってるので、驚いて反射的にそのまま背を仰け反らせ、さっと握っていた手を離した。
 
 
「イヴェ、」
 
「ロ、ローランサンっ!おは、よ・・・う、うわっ!?」
 
 
 眉を潜め、口を開きかけたローランサンの言葉を聞いてはいけない気がし、慌てて台詞を遮ろうとして、しかしみるみる顔が熱くなり近くに居るだけで恥ずかしくてベッドから降りようと試みたところで、足がもつれ手が滑り、そのまま床に背中から落ちてしまう。堅い床に叩きつけられ、重力と自分の体重を恨み、背中に走る衝撃に目を瞑った。
 
 
「いっ、たぁ・・・」
 
「お前・・・何やってるんだよ」
 
「・・・っ」
 
 
 上半身を起こすと、呆れたように笑うローランサンの顔が見えたので、もうこれ以上温度が上がらないはずなのに、それでも容赦なく上がる体温と、熱くなる目の奥を隠すように両手で顔を覆う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(あちゃちゃちゃちゃほちゃちゃちゃちゃ)

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サン←イヴェ的な何か

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