扉を開けて呆れた。
 
 
「なにやってんだコイツ…」
 
 
 ベッドで寝ているであろうと予想していた相方は椅子にもたれかかり、手に本を広げたまま夢の世界へ旅立っている。数秒その場に立ちすくし、とりあえず部屋の奥へ進み手にしていた荷物を下ろす。それから、開けっ放しの窓に目をやる。少しは危機感を持ったらどうなのだろうかと、そう心のなかで呟き窓に手をかけた。外はもうすっかり暗くなり、どこの家の明かりも消えてしまっているためか月と星が不気味なほど輝きを増していた。
 要は仕事が長引いてしまったのである。個人的に受けたものであったし、今日はイヴェールも別の用事があったので、別行動をとったのだ。黄昏時には宿に帰り着いていたであろう予定は尽く打破され、日は沈み月は昇り宿主もカウンターでうたた寝をしていた現在、ようやくここに戻ってきた。
 ただ、仕事が長引くなんざ珍しい話でもなんでもないのである。そうなのだから…
 
 
 
「…たく」
 
 
 小さく呟き、窓を閉め、鍵を掛け、相方の方へを向き直った。待ってくれるのは素直に嬉しいのだが…
 
 
 苦笑いをして、イヴェールの手にある本をそっと取り上げ、それをテーブルの上に置いた。それから銀髪の長い髪を縛っているリボンを解いた。自分と違い日ごろからきちんと手入れされている髪はそのままさらさらと流れ落ちていく。未だに起きる雰囲気を見せないイヴェールの肩と足に腕を回し、ひょいと持ち上げる。小柄なせいもあるのか、すこし軽すぎるような気もする。最近あまりいい収入がないため、食費をすこし削っていたのだが、そのせいだろうか。
 
 すこし仕事を増やそうかとそのようなことを考えていたら、だらんと垂れていたイヴェールの腕が自分の首に回り、胸に顔を押してきた。一瞬起こしてしまったのかと焦ったが、すぐに一定の間隔で聞こえてくる寝息を聞きほっとする。
 寒かったのだろうか。木の葉が少しずつ落ちていく季節に窓を開けっぱなしにしていたせいで、部屋の温度は随分下がっていた。朝起きたら、そのことを注意しなければ。
 
 
 
 抱えていたイヴェールをベッドにゆっくり降ろし、首を包んでいた腕をそっとはずす。そのうえからモーフを肩までかけた。部屋の明かりを全て消して、気持ちよさそうに眠っているイヴェールの隣に潜り込んだ。もう食べれない…わけでもないとわけのわからない寝言に苦笑いで答え、そのまま目を閉じて、襲ってくる睡魔に身を投げ出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
(一番近くに感じる温度)

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密着はあるが甘さがないというクオリティー。
きっと二人は一緒に寝てるんだ。だってそっちのほうが萌えるもの。

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